映画「硫黄島からの手紙」

アメリカが描いた映画とは思えない。素晴らしかった。
ぜひみんなに見てほしい

 絶望の中で、「一糸乱れず玉砕」なんてないわけだが、それぞれの悩みの中での行動がよく出ている。当時の日本軍の狂気のなか、それでも「背後からの弾」もあったと思うのだが。アメリカ側からは想像ができなかったのだろうか?
 たぶん栗林中将の描き方は、事実よりも良心派的なのではと思う。ただ波打ち際を放棄して山に篭り、米軍を悩ませたのは事実であるし、彼の指揮官能力は優れたものがあるのだろう。事実米軍はこの硫黄島での惨状を教訓に、その後は沖縄戦をはじめ絨緞爆撃を徹底するようになったのだから(これは今のイラク戦争にも通じている)。でも当時の将官としてはあまりにも良心的すぎるのでは?物語としては「善玉」を見出す必要があったのかもしれないが。生き残った兵に映った栗林の姿はああだったのだろうか?だとすると、硫黄島将兵は幸せだったとも言える。
 今の感覚からいえば、最後は涙をこらえて、全軍降伏の道があると思うのだが、それが教育なのだろう。教育基本法が改悪された日本は同じ道を歩むのだろうか?世界に開かれた目を持つ(このドラマでの栗林や西のように)ひとたちの多さが道を決めるのだろうが。
 西中尉の姿は、沢村にも通じて、スポーツのためにも戦争の無意味さを表現していた。
 うーん。絶望の中で生きたそれぞれの姿、とてもこの映画の中で描き尽せたものではないのだろうが、なんだか40年前の絶望的な労働争議を戦った我には重なるものがあって、脱走しても殺される兵の姿なども、なぜか涙がとまらなかった。