読後感・「呉・三国志 長江燃ゆ」@伴野朗

 面白かった。さすが中国特派員の小説である。なにより、「蜀びいき」の三国志を「呉」の視点から描いた、それも五丈原で終わらせず「晋」の時代までちゃんと描いたのがすばらしい・・・。
 もう一つ、「情報戦」を三国志の基礎においたのも楽しく読ませた。呉の孫朗、魏の曹妙、蜀の孫歴と、登場人物が興味深かった。孫朗と曹妙の交歓の場面は秀逸。孫歴を「墨家」の後裔になぞらえたのも、さすが中国史の流れに詳しいと思う。私にも嬉しい配役である。
 孫朗が子の孫烈を誅することは、物語で呉の末路を描く以上仕方ないかもしれないが、残念だ・・・。
 またその流れで、2代目孫朗=阿牙比都=?山部赤人=?阿部仲麻呂。う〜む、邪馬台国時代に、その後の歴史上の日本人をなぞらえて登場させている??面白い!
 陳舜臣の「秘本三国志」を読みたくなった。