大杉栄

 

探偵大杉栄の正月 (ハヤカワ・ミステリワールド)

探偵大杉栄の正月 (ハヤカワ・ミステリワールド)

 うーむ。面白かった。この当時のことはほとんど知らなかったが、時代がよくわかる。戦前の軍国主義への転換期、日露戦争の時代がどうであったのか。当時の支配勢力のむき出しの権力争いや、まだ未分化の世相、謀略の数々。こうして社会は動いていくのかという一面が。大杉栄については漠然と無政府主義者だったという認識しかなかったが、この本では当時の限界の中で天才の彼もそこへしか行けなかったのだろうという側面がよくでている。それにしてもこの帯江にゆかりのある(元帯江小校長)有松英義がでてきたのには驚いた。戦前のあの世の中で、高級官僚として成り上がったのだ。当時の岡山閥についての説明も参考になった。